これから戦闘に出かけようとしてアメは思った。
歴史とか、自分達はどこからきたとか神様がどうのとかいろいろあるらしいけど
確かな事は人と呼ばれる種族と獣人と呼ばれる種族が戦っている、という事だ。
種族同士だって差別や偏見があるし、いつ憎み合ったっておかしくない。
冒険者の中には自分の国に大きな誇りを持つ者もいるし
自分みたいに身分保障のために属しているだけの者もいるだろう。
だから
知らないやつと一緒の戦闘はよくトラブルがあるんだよな・・・
つまりは、今アメはジュノを活動の拠点としていた。
獣人の勢力が強まったという情報が流れると、
ジュノではパーティという戦闘チームを編成してその地域に戦闘に出かける。
見知った者同士で出かけることもあれば、
メンバーを声高に募集するリーダーについていくこともある。
これは俗に野良パーティというのだが。
その日のアメはまだジュノのレンタルハウスのベッドの中にいた。
起きるでもなく、うとうととまどろんでいると
ベッドサイドのテーブルに置いたスカイブルーの色をしたパールから声が響いた。
「アメ、いるかー?」
マイの声だ。
パールというのは通信機のこと。
LSというモードに合わせていると、同じ色のパールを持つ者同士会話が出来る。
Tellというモードにするとその相手とだけ話が出来る。
もちろんスイッチを切ると、持っていても静かな生活は送れるのだが。
だけど、アメはフワやマイ・ナツキ達と同じパールを持っている。
パールを装着していないと特にフワがうるさいのだ。
アメはもっと人と交流することを覚えないといけませんの!
って、今にも聞こえてきそうで怖い・・・
そんなことをうとうとと考えていたら、次々に色々聞こえてきた。
「いるなら返事しろー!」
というマイの声に続いてフワの声。
「アメのことだから、きっと寝てるんですの。もうお昼過ぎてるんですのー。」
分かってるって・・・
「ぅぃぅぃ・・・おきてるよ~。」
「その声、やっぱり寝てたんですの。」
フワ、するどいな・・・パールを耳に装着するとベッドから起き上がり返事する。
「分かった分かった、で、何?」
「ダボイに戦闘に行くことになった。い か な い か ?」
マイのこの口調は、ほぼ行くことを強要しているな・・・
「で、誰が行くの?」
「今のとこ俺とルーン。他に白赤忍。アメが来れば出発できる感じかな。」
ルーンと呼ばれているのは同じLSの黒魔道士Roon。
茶色いツンツンヘアーのタルタル♂。皮肉屋で時々きっつい事をさらりという。
物腰は柔らかいから穏やかな奴と思われているようだが、
男同士のような付き合いをしている自分には容赦ないんだ。
「全く昼までよだれ垂らして寝ているようじゃ、女としてダメですね。」
「うるせぇやぃ。パーティは野良?白が知らないやつって、フワは行かないん?」
「行きたかったですの、デートがなければ^^。」
はいはい、大切なご用事だったようで。
「分かった、支度していくからちょっと待ってて。どこ集合?」
「上層のチョコボ乗り場らしい。」
と、マイ。
「さんきゅ、すぐ行くよ。ちょっとシャワーだけ浴びさせて。」
「(*´Д`*)」
「(*´Д`*)」
普段は女扱いしてないくせに、この男共め・・・
「誰がパールつけて浴びるかっ。切るぜ!」
え~とかあ~とか聞こえかけたが、気にせずスイッチを切り、
身に付けていた黒い下着をぽいぽいと脱ぎ捨て、シャワールームに行く。
ちょっと冷たいぐらいのお湯を勢いよく出して
ぱんぱんと顔を叩いて気合を入れてみる。
うしっ!