白いハーフトップの上から緑色のベストを羽織り
同じ緑色のキュロットを履くと、ポケットに武器や道具、食事を詰め込んだ。
短いアームカバーにもちょっとしたポケットが付いていて
薬や小さいアイテムをしまうことが出来る。
待たせちまったかな
パールと帽子をつかみながら、急いでブーツを履く。
モグハウスから飛び出すと、チョコボ厩舎に向かって疾風のように駆け出した。
「遅れてすまない・・です。待たせたね。」
一応、知らないやつもいるので、出来るだけ丁寧にアメは挨拶をした。
「いえいえ、よくいらしてくれました。私がリーダーを務めますシンシアと申します。」
物腰穏やかな白魔道士がリーダーだった。
Sincereとは、女のような名前だが、こいつはヒュム♂だ。
その穏やかな雰囲気とは違って、逞しそうな顔つきが白い帽子の下から覗いていた。
白いローブに隠されてはいるが、ずいぶんとガタイのよさそうな体つきをしている。
こいつ、前に出て棍棒振り回したりしないだろうな・・・
思わずそんな風に思ってしまう。
一緒にいるちょんまげ結ったヒュム♂の忍者と、
茶色い髪を肩まで伸ばしているヒュム♀の赤魔道士はこのリーダーの仲間らしい。
「忍術を使う者がSinobu、赤魔道士はShieraと申します。」
「しのぶでござる。よろしくお頼み申す。」
「シエラでーす。よろしくねっ♪」
「よろしく、俺はマイティ。マイと呼んでくれればいい。」
「僕は黒魔道士のルーンと申します。よろしくお願いします。」
「よろしく、アメだ・・・・です。シーフやってま。」
「それでは、早速出発しましょう。今回の目的は救出なのですが
詳しいことは現地について作戦を練りながらご説明します。」
シンシアはそういうと、チョコボを借りる手続きに向かった。
「シンシアか、呼びにくいな。仲間には何て呼ばれてるん?」
手続きを済ませた白魔道士にアメは尋ねた。
「シンちゃんでいいよぉ?」
にこやかに答えたのはシエラ。
「シンちゃん・・・お、おけ。シンでいいよな?」
「はい、呼びやすいように呼んでもらえれば。」
ごつい顔がにっこりと微笑んだ。
皆は自分のサイズに合ったチョコボを選ぶとそれぞれ飛び乗り、
バタリア丘陵めがけて走り出した。
ここはなだらかな起伏が続く丘陵地で、あちこちの小高い丘に
エルヴァーンの祖先が眠る古墳へ続く入り口があった。
木はほとんど生えていない草地が広がっている中に
6月とはいえ、ちょっと暑さを感じるような日差しが降り注いでいた。
いつもは牙を狙って狩る黒虎の側も今日は素通りする。
やつらもチョコボの速さには追いつけないと分かっているから
見える所を走っていても襲ってもこない。
マイがシエラの横につけるように走っている。
何事か話しかけ、くすくすと笑う様子が見える。
LSで話しかける。
「マーイ、早速ナンパかっ」
「ナンパだなんて失礼な。これから一緒に行動を共にするもの同士
ちょっとしたコミュニケーションだって。」
「コミュニケーションなら、リーダーととれって。」
「なんで男と話しなきゃいけないんだよ!」
「ほ~ら、本音が出た。」
アメはにやりと笑った。
先頭をシノブに任せて、シンは最後尾から皆の進行を見届けるように走っている。
慎重なやつだな。うちとは全然違う性格だろうな・・・
LSにマイの声が飛び込む。
「うし!シエラちゃん、フリーだって。パーティの後の食事の約束をげっつしたぜ!」
「LS会話が聞こえるのなら、その子に忠告したいですわね。」
デートの準備をしているであろうフワの声が聞こえる。
「フワ、でかい声で言ってやれよ。隣り走ってるから聞こえるかもしれん。」
とアメは笑った。
「そんなの、アメが言えばいいですの。フワは忙しいですの♪」
「全く、これから危険な目に合うかもしれない時に、マイはお気楽ですね・・」
と、ルーがため息混じりに言う。
「何言ってんだ。どうなるか分からないからこそ、今を楽しまなくちゃ。」
「ふむ、一理ありますが。」
「そうですの。それは分かりますの。」
そうか?所詮は自分の力でどうにかしなきゃいけないんだし、
何かあって引き裂かれるようなことがあるのなら
最初から一人の方がよくないか?
そう思ったけど、一斉に反論されそうなのでアメは
「そんなもんか?」
と言うだけにした。
なだらかな丘陵地はやがて木々が生い茂る森林へと続いていた。
その奥にダボイと呼ばれる獣人の部落はある。