ひとしきり叫んだ後でフワは落ち着いた。
アメはまだ少しにやにやしていた。
「全く、からかわれるために話をしたんじゃないですの!」
「ん?」
「アメにも現れたんじゃないですの?
そんな運命の方が!」
「運命の?えー・・・?うちに運命的なことってあった?」
フワはもどかしさに手足をばたばたさせた。
「あーーーーー、もう、
フワの話を聞いて何も感じないですの?
ずっと一緒にいたいって思う人は分かるものなんですのっ!」
「うん、それがダンくんだったんだろ?分かったよ?」
「アメは感じていないですの?」
「何、それもしかしてシンのこと言ってるん?」
「それ以外に誰がいるって言いますの?」
「あー、それならあっちは別に何も思ってないんじゃ?
最近全然顔見せなくなったし。」
フワは大きなため息をついて、呑気にクアールのソテーを平らげたアメの顔を見た。
「アメ、もう少し頭を使いなさいですの。
あんなに律儀なシンさんが体の治ったアメに会いにもこないなんて、
おかしいとおもわないですの?」
「だって、気が付いてからもう大丈夫だってtellしたし?」
「シンさん、何か言ってませんでしたの?」
「ん?普通に無事でよかったとか、元気そうで安心したとか?」
「分かりましたの。」
「ん?何が?」
「アメが分かってないってことが分かりましたの。」
「なんだ、そりゃ。」
「話を変えますの。
シンさんはフワとタローと一緒にチュニックのことであちこち来てくれましたの。
もう大丈夫、だけじゃなくちゃんとお礼しとくですの!」
「ああ、そっかー。タローもそんな話してたなぁ。
一言、礼でも言っとくわ。」
「それがいいですの。」
やれやれと言うように、フワは立ち上がりかけた。
今日はもう用事があるから、とドアのほうへ歩き出した。
見送りながら、アメは言った。
「ソテー、さんきゅ。ダン君にもよろしくな。」
「伝えておくですの。
・・・・・あ、そうそう、明日ちょっとした護衛の依頼を受けてありますの。
ダン君と一緒に受けた依頼なんですけど、
よかったらシンさん誘って一緒に来てくれません?」
「誘うのは構わないけど、来るっていうかどうか保証できないぜ?」
「まぁ、そうしたら他のを連れてくだけですの。
一応声かけてほしいですの。」
「ういうい。」
フワが部屋から出て行くのを見届けた後、アメはすぐにシンにtellを入れてみた。
「あーーー、シン?こんちわ。」
返事はすぐに返ってこなかった。
聞こえてなかったかな、と思ったあたりにシンの返事が届いた。
「すみません、返事遅れました。」
「あ、すまん。忙しかったか?」
「ちょっと戦闘中だったもので。
お気遣いなく。アメさんですね?」
「そうそう、うち。
話してて大丈夫か?」
「はい、一段落つけましたから。お久しぶりです、アメさん。」
「うん、久しぶり。顔見せないからさ、どうしたかと思って。
いろいろ世話になったのに礼も言ってないしな。」
「いえ、お元気になられたならそれで十分ですよ。」
「んー、そういうわけにもなぁ。
ちゃんとお礼しなきゃだめだって、フワに怒られたからさぁ。
シン、今どこにいるん?」
「え?今ですか?クフタルですが、もう帰りますし。」
「ジュノに?」
「いえ・・・」
「んじゃ、ラバオだな?うちも向かうわ。待っててね。」
パールの向こうでシンが何かを言いかけたような気がした。
用があるなら会った時に聞けばいいやと、アメは部屋を飛び出した。