カー・トルが
「では、対戦の組み合わせと順番を・・・」
と言いかけた時、ソノタがそれを遮った。
「あ!あの!ボク!ボクは違うんです!」
カー・トルがぎろりとソノタを見た。
「違う?どういうことだ?招待状を受け取ったからこそ
ここにおるのであろう?」
「いえ!本当!ボクじゃないんです!
そ、そう!遅れてて、時間に遅れるからって!
エントリーだけしててって頼まれただけなんです!
本当です!」
「おい!お主・・・!」
エッキがソノタの襟首を掴んで持ち上げた。
ソノタは泣きそうになりながら、小さな声でエッキに囁く。
「ボク・・・絶対どれも無理!死んじゃうって!
お願い、見逃してよぉ・・・」
エッキはちっと舌をならすと、無造作にソノタを下ろした。
カー・トルは少し考えてから言った。
「それでは、その戦士を早く連れてくるがいい。
ただし、対戦が進み、順番になっても現われない場合、
ヤグード戦士の不戦勝とする。それでよいな?」
シンが口を開く。
「対戦順は?」
「それもこれから決める。
最初の対戦となった場合は運がなかったとあきらめるんだな。」
ストラが冷静な口調で問う。
「で、対戦相手と順番の決め方は?」
カー・トルが4枚の羽根を差し出して言った。
「これは各ヤグード戦士の羽根である。
こちらの順番は先に決めてある。
各々が一枚を選べ。
それによって、相手と順番が決まる。」
4人はじっとその4枚の羽根を見つめた。
人の目では、違いが全く分からない。
エッキが苦笑いしながら、最初の一枚をとった。
「ワシらが見分けられないのをいいことに適当に決めるのではあるまいな?」
カー・トルがにやりとしながら答える。
「心配するな。そんなことはしない。」
次にストラが一枚をひく。
「公正に願いますよ。」
シンがソノタを見た。
「どうします?先に選びますか?」
ソノタはおろおろしていた。
「残り物には福があるっていうけど・・・ああ、どうしよー。
でも、あー・・・」
シンは苦笑した。
「悪い選択肢を残してしまっては恨まれそうです。
ソノタさん、先に引いてください。」
「うー・・・わかったよぉ・・・」
迷いながら、ソノタは一枚を受け取った。
残った一枚をシンが受け取りながら、カー・トルに尋ねる。
「さぁ、選びました。対戦順と相手を教えてください。」
エッキがソノタに言った。
「誰か連れてくるとは思えんが、もし連れて来る気があるのなら、
さっさと行かんかい!」
ひいっと小さく叫んで、ソノタは二、三歩後退りそのまま背中を向けて走り去った。
その姿を見て、エッキが言った。
「あやつ、戻ってはこんじゃろ・・・」
カー・トルは双方の代表者に舞台から降りるように促した。
そして、高らかに対戦を発表した。
「戦いは選ばれた!
第1回戦 Yagudo Prelate 対 ウィンダス代表ガルカ族!
第2回戦 Yagudo Flagellant 対 ウィンダス代表エルヴァーン族!
第3回戦 Yagudo Assassin 対 ウィンダス代表ヒューム族!
第4回戦は・・・あのタルタル族は運がよいようだ。
最後の戦士の羽根を引き当てた。」
ストラが尋ねた。
「もし、勝敗が決まらない場合はどうなります?」
カー・トルは涼しい顔で答えた。
「代表戦になる。」
シンは顔をゆがめた。
「最悪、不戦勝のハイプリとの対戦ですか・・・」
エッキが力なく笑いながら言った。
「なぁに、3人とも勝てば問題はない・・・!」
大僧正と呼ばれるヤグード戦士がおもむろに立ち上がった。
「もし出番が回ってこなかったら、ここに来た意味がない。
我は戦いを欲するぞ。」
カー・トルはその言葉に困惑した。
「最強の戦士達、3人とも負けてしまうなどとは
私は考えておりません。
それに、対戦は公正に決められたものであり・・・」
周囲に向かって、大僧正と呼ばれるヤグードは大きな声で問うた。
「皆のもの、我の戦いを見たいか?」
地鳴りのような共鳴する声が周囲に響き渡った。
すでにこのままでは収まらない状況のように見えた。
カー・トルもそのまま黙ってしまった。
3人はその様子を見回した。
「公正も何もあったもんじゃない・・・」
ストラの額に冷たい汗が流れた。
シンが立ち上がり言った。
「私がお相手になりましょう!」
エッキとストラは驚いてシンを見あげた。
「お主!」
「シンさん!いいのですか?」
「私が順番としては私たちの中で一番後です。
もしかしたら代わりの戦士が来ないとも限りません。
これが最善の選択と思います。」
「シン殿!すまぬ!」
「私たちが勝って、あなたに負担を残さないようにします!」
ソノタはバルガの舞台から離脱したものの、
舞台へ転送される魔方陣の近くに膝を抱えて座り込んでいた。
「どうしよー・・・ハイプリいるって聞いたら誰も来ないよなぁ・・・
そうでなくても、あんな相手ばっかのとこに
内緒で頼んでも恨まれちゃうしなぁ・・・
もうあの3人とは会うこともないだろうから、
いいかなぁ・・・帰っちゃって・・・」