「うちには似合わねぇな・・・」
その白いドレスに袖を通して鏡を見つめて
彼女はため息をついた。
彼女の名前はAme。
赤茶色の髪はツンツンと攻撃的に整え、
顔に刻まれた模様はハンターとしての誇りを示す為に
幼い頃にタトゥーとして刻み込まれたものだ。
そんなアメがレースをあしらった純白のドレスを身にまとっている。
「似合わないけど、仕方ないか。」
そう言って自分の髪を更にくしゃくしゃっとして苦笑いをした。
アメは、そしてふと思い出していた。
男なんて力ばかりが自慢の阿呆ばかりだ。
アメは密かにそう思っていた。
そもそもオスというものに対しての先入観があった。
同種族の男共は至って平和主義者で滅多に屋外に出ないし
他種族の目にとまることもない。
ミスラ♂はオポオポではないかとうわさされているぐらいだ・・・。
「全く腰抜け野郎ばっかだ。」
同種族からは女の強さ、誇らしさしか感じていなかった。
アメはそのしなやかな特性を活かして、シーフ業を主な生業としていた。
ジュノに出て、色々な人と出会い共に獣人と戦いもした。
こっそりと敵の後ろに回り、踊りかかるように止めをさす。
その短剣に付いた血をペロリと舐めるアメに
苦笑いをする仲間も少なくはなかった。
「何びびってんのさ。キミら食べたりはしないからさ。」
そう言ってにやりと笑うものだから、余計にこいつは危ないやつだと思われる。
しかし別に一匹狼(いや、野良猫というべき?)を気取っているわけではないので
アメには友人もいたし、冒険を助け合う集団にも属していた。
数人で獣人と戦ってきた帰りに、ジュノ下層の競売前で
一緒に出かけていたアメの友人が話しかけてきた。
「あんなに危ないオーラ出してると、殿方は逃げてしまいますの。」
この子はFuwa。金色の髪を二つに結び、前髪を下ろしている
やさしくおっとりとした印象のタルタルの女の子。
白魔道士としてやさしく前衛をサポートしている。
「フワ、にっこり笑ってきっついこと言ってくれるね。」
「アメのためですの。
寂しい青春を送って、そのままばばぁになってしまいますの。」
「ぉぃぉぃ・・・」
「アメには心ときめく殿方はいませんの?
好きな人がいるって、とっても素敵なことなんですの。」
「フワにはいっぱいいるもんな。」
少々辟易してきたので、そろそろいつ逃げ出そうかと思いながら
アメは話を合わせていた。
「フワは恋多き乙女なんですの。」
にっこりと微笑むフワには実際数人の相手がいるのを知っている。
「で、本命っているのか?」
「皆、いい人達ですの。フワにはまだ選べないですの。」
「へいへい、ダブルブッキングして慌てることのないようにな。」
アメは手をひらひらさせると、その場を立ち去ろうとした。
「確かに獲物しとめただけで仲間びびらせるのはアメぐらいだろうな。」
うぁ、また憎まれ口叩くやつが出てきたよ・・・。
こいつはMighty。マイと呼んでいる。
金髪の長髪でイケメン気取ってる戦士。
外見と裏腹に、ちゃんと鍛えているらしく腕っ節はすこぶるよい、
と認めてやろう。
しかし、マイティなんて名前が驕っているぜ。
「マイまで来ると、話が終わんないからあっちいけや。」
アメは頭を抱えてしまった。
「恋愛沙汰なら俺に任せときな。もてない猫の相談にものるぜ?
なんなら練習相手になろうか?」
「アメはそういうことには興味なさそうですの。」
「あのなー、うちにはそういうの必要ないの!」
「諦めるには早いと思うけどね?せっかくミスラなんだから、もっとこう色っぽくさぁ?」
マイは大げさに両手を広げてやれやれというように言った。
余計なお世話だし、何だか腹が立ってきたぞ。
「てか、あーーーーーー!うざいっちゅーに!ちょっとお宝探してくる!」
アメはチョコボ乗り場目掛けて逃げるように走り去った。
後に残ったフワとマイ。
「あーぁ、行っちゃったね。」
「行っちゃいましたの。」
「んじゃ、フワちゃん俺とお茶でもしようか?」
「ごめんですの。フワにはデートの予定がありますの。」
「フワちゃんにもふられちゃったかぁ。」
「お茶の相手ならそこらに流し目使っていくらでもひっかけたらいいですの。
フワは、フワに一生懸命な人じゃなきゃいやですの^^」
「フワちゃん、しっかりしてるわ・・・ある意味一番怖いかも?」
「アメほど怖くないですの^^」